労働安全衛生マネジメントシステム-要求事項

1 適用範囲

2 引用規格

3 用語及び定義

4 組織の状況

4.1 組織及びその状況の理解

4.2 働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解

4.3 労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲の決定

4.4 労働安全衛生マネジメントシステム

5 リーダーシップ及び働く人の参加

5.1 リーダーシップ及びコミットメント

5.2 労働安全衛生方針

5.3 組織の役割,責任及び権限

5.4 働く人の協議及び参加

6 計画

6.1 リスク及び機会への取組み

6.2 労働安全衛生目標及びそれを達成するための計画策定

7 支援

7.1 資源

7.2 力量

7.3 認識

7.4 コミュニケーション

7.5 文書化した情報

8 運用

8.1 運用の計画及び管理

8.2 緊急事態への準備及び対応

9 パフォーマンス評価

9.1 モニタリング,測定,分析及びパフォーマンス評価

9.2 内部監査

9.3 マネジメントレビュー

10 改善

10.1 一般

10.2 インシデント,不適合及び是正処置

10.3 継続的改善

 

この規格は,2018 年に第1 版として発行されたISO 45001 を基に,技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。

 

背景

組織は,働く人及び組織の活動によって影響を受ける可能性のあるその他の人々の労働安全衛生に対する責任を負っている。この責任には,心身の健康を推進し保護することが含まれる。

労働安全衛生マネジメントシステムの導入の目的は,組織が安全で健康的な職場を提供できるようにし,労働に関係する負傷及び疾病を防止し,労働安全衛生パフォーマンスを継続的に改善できるようにすることである。

 

労働安全衛生マネジメントシステムの狙い

労働安全衛生マネジメントシステムの目的は,労働安全衛生リスク及び労働安全衛生機会を管理するための枠組みを提供することである。労働安全衛生マネジメントシステムの狙い及び意図した成果は,働く人の労働に関係する負傷及び疾病を防止すること,及び安全で健康的な職場を提供することである。したがって,効果的な予防方策及び保護方策をとることによって危険源を除去し,労働安全衛生リスクを最小化することは,組織にとって非常に重要である。

労働安全衛生マネジメントシステムを通じて組織がこれらの処置を適用したとき,組織の労働安全衛生パフォーマンスは向上する。労働安全衛生パフォーマンス改善の機会に取り組むために早めの処置をとる際に,労働安全衛生マネジメントシステムは,効果及び効率を更に高めることができる。

この規格に適合するかたちでの労働安全衛生マネジメントシステムの実施は,組織が労働安全衛生リスクを管理し,労働安全衛生パフォーマンスを向上させることを可能にする。

労働安全衛生マネジメントシステムは,組織が,法的要求事項及びその他の要求事項を満たす助けとなり得る。

 

成功のための要因

労働安全衛生マネジメントシステムの実施は,組織にとって戦略的決定であり運用面の決定である。労働安全衛生マネジメントシステムの成功は,リーダーシップ,コミットメント,並びに組織の全ての階層及び部門からの参加のいかんにかかっている。

労働安全衛生マネジメントシステムの実施及び維持,並びにその有効性及び意図した成果を達成する能力は,多数の重要な要因に依存している。それらの要因には,次の事項が含まれ得る。

a) トップマネジメントのリーダーシップ,コミットメント,責任及び説明責任

b) 労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を支援する文化をトップマネジメントが組織内で形成し,主導し,推進すること

c) コミュニケーション

d) 働く人及び働く人の代表(いる場合)の協議及び参加

e) 労働安全衛生マネジメントシステム維持のために必要な資源の割振り

f) 組織の全体的な戦略目標及び方向性と両立する,労働安全衛生方針

g) 危険源の特定,労働安全衛生リスクの管理及び労働安全衛生機会の活用のための効果的なプロセス

h) 労働安全衛生パフォーマンスを改善するための労働安全衛生マネジメントシステムの継続的なパフォーマンス評価及びモニタリング

 

i) 組織の事業プロセスへの労働安全衛生マネジメントシステムの統合

j) 労働安全衛生方針に整合し,組織の危険源,労働安全衛生リスク及び労働安全衛生機会を考慮に入れた労働安全衛生目標

k) 法的要求事項及びその他の要求事項の順守

組織は,この規格をうまく実施していることを示せば,有効な労働安全衛生マネジメントシステムをもつことを,働く人及びその他の利害関係者に確信させることができる。しかし,この規格の採用そのものが,働く人の労働関連の負傷及び疾病の防止,安全で健康的な職場の提供,並びに改善された労働安全衛生パフォーマンスを保証するわけではない。

組織の労働安全衛生マネジメントシステムの詳細さのレベル,複雑さ,文書化した情報の範囲,及び成功を確実にするために必要な資源は,次の事項などの多数の要因によって左右される。

- 組織の状況(例 働く人の人数,規模,立地,文化,法的要求事項及びその他の要求事項)

- 組織の労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲

- 組織の活動の性質及び関連する労働安全衛生リスク

Plan-Do-Check-Act サイクル

この規格において採用する労働安全衛生マネジメントシステムアプローチは,Plan-Do-Check-Act(PDCA)の概念に基づいている。

PDCA の概念は,継続的改善を達成するために組織が用いる反復的なプロセスである。この概念は,マネジメントシステムにも,その個別の要素のそれぞれにも次のように適用できる。

a) Plan:労働安全衛生リスク,労働安全衛生機会,その他のリスク及びその他の機会を決定し,評価し,組織の労働安全衛生方針に沿った結果を出すために必要な労働安全衛生目標及びプロセスを確立する。

b) Do:計画どおりにプロセスを実施する。

c) Check:労働安全衛生方針及び労働安全衛生目標に照らして,活動及びプロセスをモニタリングし,測定し,その結果を報告する。

d) Act:労働安全衛生パフォーマンスを継続的に改善し,意図した成果を達成するための処置をとる。

 

この規格の内容

この規格は,国際標準化機構(ISO)のマネジメントシステム規格に対する要求事項に適合している。

これらの要求事項は,複数のISOマネジメントシステム規格を実施する利用者の便益のために作成された,上位構造,共通の中核となるテキスト,共通用語及び中核となる定義を含んでいる。

この規格の諸要素は,他のマネジメントシステムの諸要素に整合化し,又はそれらと統合することができるが,この規格には,品質,社会的責任,環境,セキュリティ,財務マネジメントなどの他の分野に固有な要求事項は含まれていない。

この規格は,労働安全衛生マネジメントシステムの実施及び適合性の評価のために組織によって用いることができる要求事項を規定している。組織は,次のいずれかの方法によって,この規格への適合を実証することができる。

- 自己決定し,自己宣言する。

- 適合について,組織に対して利害関係をもつ人又はグループ,例えば,顧客などによる確認を求める。

- 自己宣言について組織外部の人又はグループによる確認を求める。

- 外部組織による労働安全衛生マネジメントシステムの認証/登録を求める。

この規格の箇条1~箇条3 は,この規格の使用において適用する適用範囲,引用規格,用語及び定義を

示し,一方で,箇条4~箇条10 には,この規格への適合を評価するための要求事項を規定している。附属書A には,これらの要求事項の説明が記載されている。箇条3 の用語及び定義は,概念の順に配列した。